バイタルサインとは、脈拍や呼吸、血圧などから体の具合を把握するための手段です。高齢者の正常値は、脈拍が60~70、呼吸数が10~30、血圧が140/90mmHg未満(130/85mmHg以上だとやや高値)、体温が36~37度程度です。意識や尿量、血液ガス測定が測定項目に含まれることもあります。特に、脈拍や血圧は、悪性腫瘍に次いで日本人の死因の第2位に挙がる循環器疾患を防ぐために重要です。
脈拍異常の背景には、冠動脈疾患や心臓自体の病気、甲状腺疾患などがあります。冠動脈疾患としては心筋梗塞や、その前段階の狭心症が挙げられます。心筋梗塞が進行すると、心臓に穴が開いたり心室細動が起こって、血液を体に送り出せず死に至ることもある恐ろしい病気です。また、心臓そのものの病気には、心房細動や房室ブロックなど心臓内での連携が取れなくなり、心臓の収縮が異常を来すものもあります。このほか、心筋の拡張や収縮の具合が悪くなる心筋症や心筋炎、心臓弁膜症などがあります。
高血圧にも注意が必要で、心臓に負担がかかると心不全を起こす原因になります。また動脈硬化により脳卒中や心筋梗塞なども引き起こします。ほかにも腎不全や失明など、大規模な治療を必要とする疾患を引き起こします。低血圧はそこまで問題とならないことも多いですが、感染症や心臓を取り囲む袋への血液貯留、肺梗塞、大量出血などにより体に十分な血液が回らなくなるショックを起こしたり、末期がんといった命に関わる病気を示唆することもあるため、精査が必要です。